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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その12)】 

 一同は兵庫が次に何を話すか待って居た。
「若林様、本日より人を入れさせて頂きます。そのために若林家の方々は当主の進之介殿を残して神田庵へ移動して頂きます。ただ、来客などの対応のため日中は何方かお一人お願いします」
「日中の留守番を置くのはわかりましたが、私には勤めが在りますので三食頂いて居ます。そう云う事で、栄が居らぬと困るのだ」
「こうしましょう。数日は、奥様も屋敷で平素の様に働いて頂きます。当方にも三食食べないと力が出なくなる者ばかりですので、賄い方を養って居ます。奥様が居る間に口に合うものを作れるようにします」
食べることの心配がなくなることは、大きな安心である。進之介以外の者まで安堵の様子を見せた。
「その賄い方は、駒形の男を出しましょう」内藤が買って出た。
「入って頂く者は連絡係一人と保安二人と当面します。各養育所と話し合って当番を決めてください。他に山中さんには若林家の居候・平九郎を演じて頂き、賊の的に成って下さい。更に若林家を伺う者が居るかを屋敷の外で見張る者として弥一さんと今風呂屋で三助修行中の網吉さんに頼みます。連絡は先ず矢五郎さんに入れ、指示を受けて下さい。なお、この体制は相手のことが判って居ないため守りに偏って居ます。役目を超えて相手の動きを感じ取るよう努めて下さい。私は養育所や預かり所に行き、子供たちと餅を搗いて過ごします」
「鐘巻さん、餅つきは明日午前は深川、午後は薬研堀の段取りで動いて居ます」
「搗くのは、全部で何斗に成りますか。二十斗は覚悟して下さい。明日の深川、薬研堀は各二斗ですから肩慣らしのつもりで搗いて下さい」
「私は子供たちの分を子供たちと一緒に搗くだけで、残りは皆さんに楽しんで貰います」
「そうして下さい。奥さんが疲れてしまいますからね。帰りに駒形に寄って下さい」
「分かりました。若林のご隠居だけでも神田庵に入って下さい。夕食は一緒に頂きましょう」
「分かった。そうするよ」
「私は戻りますが、富五郎さん神田庵のお役を確かめてから戻って下さい」
「そう致します」

 神田庵に戻った兵庫は志津が部屋にいないので、若林家を受け入れる部屋を確かめに行った。
奥の十畳間が寝所に割り当てられ、衝立障子で二つに仕切られていて夜具が二組ずつ置かれていた。
 そして部屋に戻ると志津も戻って来ていた。
「お部屋を見に行かれたと云う事は今夜からお泊りですね」
「はい、但し隠居夫婦たちだけです。当主の世話をする必要が在るのでそのことが出来るようになるまで奥さんはこちらには来られません」
「屋敷とこことは然程離れてはいないので、こちらから通えば良いと思うのですが・・」
「一日なら、何とでも言い訳出来ますが、許可なく江戸を離れることは出来ません。ここは江戸ですが何日ともなると、ことが知れた時、屋敷を離れた言い訳が難しいのです。正直言えば良いのですが出来ずに嘘を付き、万が一露見すると罪に成ります」
「正直に云えませんか」
「他人に迷惑が掛かると思えば言えないでしょう」
「窮屈ですね」
「窮屈が仕官して居る者の務めです」

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Posted on 2018/10/07 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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