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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その18)】 

 いち早く集合場所に決めた了源寺門前町の茶店についた中川矢五郎は、茶店の主・山内康介に、
「追って来ると思いますが鐘巻さんの頼みです。暫く茶店を無骨な男たちの集合場所として使わせて頂きたい」
「ここは、こちらがお借りしている所です。この茶店が懐かしい無骨な方々も来られるのですか」
「半分はその手の者たちだよ。用件は鐘巻さんが話すと思う。わしはその用件に進展が生じたか確かめて来る。無骨な者たちが来たら待つように言って下さい」
「分かりました」

 矢五郎が辻番の所まで来るのに気づいた弥一が番屋の中に
「清兵衛さん、ここを離れるので頼みます」と声を掛け矢五郎の方に歩み寄っていった。
「何か在ったか」
「はい、若林家の所在と平九郎様のこと聞く二人ずれが来ました。網吉さんが後を追って居ます」
「そうか、進展だな。万が一が十中八九まで一気に跳ね上がったな。皆が了源寺門前町の茶店に集まって来る。網吉が戻ってきたら、皆も見張りを解いて集まるよう伝えてくれ」
「分かりました」
矢五郎が戻って行き、弥一は別の所で見張っている心太と三五郎にこのことを伝えに見張り場を離れ、若林家の見越しの松が直接見える所に立った。
弥一は人通りが途絶えている道に足を踏み入れていき、若林家の門前を過ぎ更に歩いていくと前方に三五郎が姿を見せた。
弥一は手招き、やって来た三五郎に
「心太さんは?」
「網吉さんと二人連れを追って行きました」
「矢五郎さんから、網吉さんと心太さんが戻ってきたら了源寺門前町の茶店に集まれとのことです」
「分かった」

 茶店に続々と男たちが集まってきた。その者たちは茶店の商いの邪魔にならないように奥座敷に詰め込まれていた。
そこにやって来た兵庫に矢五郎が
「今、平九郎の所在を確かめに来た男・二人を網吉が追って居ます」
兵庫は頷くと混雑している奥を見て、
「私も含めてですが、こんなに暇人が居たのかと思いました。場所を代えましょう。快延和尚に寺の空き部屋を借りてきます」
 兵庫は直ぐに戻って来て、
「本堂を借りました」
 茶店に詰め込まれていた者たちが寺の山門をくぐっている時、心太らが戻って来た。
心太は並んで歩く兵庫と矢五郎に
「二人のねぐらを確かめました。そこが平右衛門町の裏店でした。それで平右衛門町に住んでいる者がこちらで顔を晒すのは良くないと、網吉さんは向こうの見張りに徹するそうです」
「だれか、山中さんを呼んで来て下さい」と兵庫が叫んだ。
こうして、本堂に男たちが集まった。
「皆さんに集まって頂いたのは、若林家の様子を確かめに来る者たちを探し出し、その住処を探し出すために手分けして二六時中屋敷を見張って貰うためでした。しかし、相手も寒い夜に若林家を確かめに来るのは大変と先ほど来てくれたそうです。それをここに居る心太さんが後をつけ隠れ家を突き止めてくれました。と云う事で取り敢えず皆さんにお願いすることは変わることに成ります。ほぼ、間違いなく若林家は襲われます。迎え討つか。逆に押し込むか。あるいは他に手が在るか、まだ何日か在りますので考え、お願いします」
「ところで肝心の隠れ家は何処ですか」と碁四郎が確かめてきた。
「碁四郎さんにも網吉さん同様に、阿部川町付近への出入りは止めて頂きます」
「どう云う事ですか。私と網吉だけが?・・・地理的共通点は平右衛門町住まい・・・まさか隠れ家は平右衛門町か」
「そのまさかです。特に網吉さんは風呂屋で三助をしており顔を知られている恐れが在りますので相手の気に成る場所には近づかないようにとこちらに戻って来ませんでした」
「分かった。二十五日までに隠れ家に何人集まるか見届けるようにします」
「頼みます」
「もう一つ調べて貰いたい。そのために何人か出すよ」と矢五郎が云った。
「何を調べるのですか」
「ねぐらを平右衛門町にしたのには訳が在る筈だ。木戸が閉まった後に阿部川町に押し入り、平右衛門町に戻るのは無理だと思う。平右衛門町は晦日の悪事のためだと考えるのが素直だ。だとすれば近くに襲われる商家が有るはずだ。もし、その商家が分れば、皆の出番が出来るのではないか」
「そうだとすれば、心太さん、阿部川町から平右衛門町まで戻る途中で、わざわざ寄り道したとか変わった様子を見せませんでしたか」
「回り道は無かったと思います。ただ、付けている私たちが歩みを一度だけ止たのが
二人が茅町で歩みを止めたときです」
「臭いますね」
「その臭いを確かめて貰いたい」
「二人ほど動きの良いものを浮橋詰めで頼みます」
「弥一・・・」
「私は辻番として話をし、一朱銀まで頂いて居るので駄目です」
「心太と三五郎頼みます」
「分かりました」

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Posted on 2018/10/13 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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