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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その21)】 

 暫くして碁四郎は神田庵に入り、成田屋時代に使われていた仕事場で話し始めた。
碁四郎から長い話を聞かされた兵庫が
「お蔦婆さん、お手柄ですね」
「はい、それで、この話に間違いが無いとした時、どうしますか」
「美味しい話ですが、このお手柄の始末は火盗改めに任せましょう」
「美味しいものを食べずに、匂いだけで我慢する訳ですね」
「不満ですか」
「私はそれで良いのです。兵さんが我慢出来れば」
「私は信心深くは在りませんが、年籠りに行く信心深い方々のために、闇夜に明かりを灯し、接待までする方を守って、なにがしかを期待するのは今の私には出来ません」
「それで良いとして、そのためには二十五日に若林家に切り込む賊を、晦日には働ける程度の怪我で追い返さねばなりませんね」
「手加減するのは難しいので、木刀の物打ち辺りに荒縄を巻き、即死せぬようにしましょう」
「奉行所では手入れの際には刃引きを使わせるそうですね」
「あれは、罪人のためでは在りません。出血で殺さずに裁きの日まで何とか生かしておくためです。使い物にならない身体に成ってしまうので斬られた方がと思うそうです」
「話が逸れますが、七人が富士の湯の二階に来て、未だ間が有るのか私に賭け碁を挑んできました。賭け金を十両に上げてきたので、持ち合わせが無いと云うと私の持ち物に目を付けたので、無名ながら同田貫を十両ではと断りました。今度は私の髷ではと言って来ました。私は十両なら賭け碁でひと月で稼げるが、切られた髷はひと月では元には戻らないと云い他の仲間から借りろと催促すると十両が二十一両三分三朱になりました」
「髷がついて居る所をみると、勝ちましたね」
「はい、勝ちましたが、有り金を取ってしまうと相手の予定に狂いが生じて、予定外の悪事を働かれるといけないと思い、返しました。それを悪びれる様子もなく懐に入れました。思いやりのない身勝手な男です。四郎と名乗って居ましたが侍だと思います」
「四郎・・・三左衛門の弟かな。碁四郎さんと顔を合わせて居るとなると、四郎の相手は甚八郎に任せることに成りそうだな」
「甚八郎は腕前に不足はないですが、以前の荒々しさが消えて居るのが実戦となると気に成ります。しかし得物が木刀、それも荒縄巻きなら手加減せずに討ちすえてくれるでしょう」

 碁四郎と兵庫の話が晦日の話から間近な二十五日の話に、さらに進み笑え声が聞こえ始めた頃、湯屋を出た七人はやはり若林の屋敷の所在を確かめに来ていた。門前を通り抜けると、四郎が
「待機する所は近くか」と尋ねた。
「はい、阿部川町の裏店を借りて在ります」
「万事支度は済んだか。未だ飯が未だだが何処か飯を食わせる所は無いか」
「近くの了源寺門前町の参道に茶店が在りますが、暮れ六つに成ると店を閉じますので、閉まっているかもしれませんが・・・」
「あまり町中に見慣れぬ顔を出したくない。先ず、茶店を見に行こう」
七人の間で語られたことは、遠くで見張る者たちには判らない。
ただ七人の歩みの遅さから、まだこの近辺のことを調べている様に感じ取られた。そして七人動きから了源寺方面に向かい参道の入口までやって来た。
「茶店だけだが明かりがついているぞ」
参道に入った七人の足が早まり、茶店までやって来た。
「親父、良い匂いだ。蕎麦を頼む」
「一杯二十文に成りますが、皆さんも同じですか」
「同じかどうか聞くのは他にも旨いものでもあるのか」
「カラ寿司が一つ十二文ですがあまり残って居ません。搗きたての一つ半合の切餅が十六文です」
「親父は越後の者か」
「分かりますか」
「訛りがあるからな」
「隠せませんね。田舎者と思われたくないので出来るだけ江戸弁と思って居るのですが、未だ一年も経って居ませんので・・」
「全員、蕎麦を頼む。他に切餅を百ほど包んでくれ」
「有り難うございます」
 蕎麦を食べ終わった男たちは、金を払い帰っていった。
その後を、見張りの者たちがつけて行った。そして直ぐに戻って来た。
「阿部川町にも家を借りていました。二人残して戻って来ました」
「それでは腹ごしらえして、見張り番を代わってやってくれ」
「皆さん、蕎麦は一杯にして下さい。餅はまだまだ残って居ます」
「それにして切餅を百も買っていった。あまり外には出ぬ覚悟のようだな。わしは今日のことを若林に伝えて戻る。皆も見張りの者が戻り飯を食ったら戻ってくれ」
「そうさせて貰います」

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Posted on 2018/10/16 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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10/16 06:10 | edit

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