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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その22)】 

 二十三日の午後から夜にかけて晦日の三左衛門の残党と思われる者たちに大きな動きが生じた。その情報は夜間に各養育所の留守居に伝えられ、改めて今後の対応を決める談合が翌朝、中の郷の道場で開かれることになった。
 そして、嘉永六年十二月二十四日(1854-1-22)が明け朝食後、中の郷の養育所道場に人が集まった。
「昨日、大きな変化が起きましたので、改めて時の流れにそって報告して貰います。先ずは山中さんから」と兵庫が本題に入った。
「昨日の午後、浅草寺方面から旅姿の五人が日光街道を浅草御門までやって来たところを、先着の二人が出迎え平右衛門町の裏店に入り、総勢七人となりました。男たちは暫くして旅の汚れを落とすためか、揃って網吉が三助修行をしている富士の湯に入った後、暫く二階で談合し、私と二十一両三分三朱の賭け碁を打ち、負けました。もし、なけなしの金を奪うと、予定外の悪事を働く恐れが在るので返しました。その後、日光街道に出て仏具屋の前で立ち止まり、安倍川町に向かった様です。なお、仏具屋の前で七人が止まった訳は晦日に押し入る店ではないかと思って居ます。この件については阿部川町の顛末が分った後に致します。七人はどこにも寄らず阿部川町に入ったようですが、その後のことを矢五郎さんお願いします」
「七人が若林家に向かっている一報を三五郎さんから受けたのは六つの鐘がなる少し前だった。わしも顔を覚えるため出たが暗いので諦め、茶店に戻り知らせを待った。それによれば七人は確かに若林の門前で足をとめた。それだけで通り過ぎた後に向かったのが、わしが茶を飲んでいる茶店だった。お蔭で七人の顔を拝ませて貰ったよ。七人は蕎麦を食い、切餅を百個包んで貰い金を払い茶店を出て行った。行先は阿部川町の裏店だった。阿部川町にもねぐらを用意していた。二十五日はまず間違いなく若林家に夜襲を仕掛けるだろう。なお、七人の内二人は平右衛門町に戻ったと聞いている」
「はい、二人は戻って居ます」と碁四郎が補足した。
「それでは、明日、二十五日に備えるための段取りを決めます。阿部川町に居る五人の目を盗んで若林家の老夫婦と小者を今日中に神田庵に移す事にします。そのために本日、私と明日働いて貰う者の中から数人連れて入ります。襲撃の事情を話し屋敷を出る支度をして貰います。四半刻経ったら用意が出来ますので、見張りが居ないのを確かめ門を叩いて下さい。私が神田庵まで護衛します」
「今日のことは分かった。みな、明日のことを知りたいのだ。聞かせてくれ」
「明日の夜討は極力穏便に無かった事として済ませたいのです」
「何故だ」
「言葉は悪いですが、貧乏御家人の屋敷に賊が入るのは狙いが金ではないことは明らかです。賊は敵討ちのつもりで夜討を仕掛けて来るのです。事件にしては判官ひいきの江戸っ子を喜ばすだけで終わってしまいます。賊は賊として仕置を受けさせた方があとくされがありません。そのためには晦日の押し込みをさせ、そこで制裁する方が良いと思うからです」
「分かった。それで夜討に来る者たちをどのように穏便に追い払うのだ」
「追い払うのは私を含め侍七人で、荒縄を巻いた木刀で極力怪我をさせずに追い払います。その代わり晦日は残りの皆さんで頼みます」
「それで鐘巻さん以外の侍、六人は誰ですか」
「根津甚八郎さん、中川彦四郎さん、新藤栄二さん、金子鉄太郎さん、浜中松之助さん、反町半四郎さんを考えています。出来れば本日入るのは独り身の方にお願いしたいです」
「私は構いません」と独り者の四人が同意した」
「山中先生が入って居ませんが」と甚八郎が首を傾げた。
「碁四郎さんは風呂屋の二階で顔を合わせていますので、賊が平右衛門町に戻れなくなり晦日の押し込み先を代えられてしまうか、出来なくなってしまうのです。ですから、山中さんの出番は三十日に成ります」
「分かりました。それでは私が荒縄巻きの木刀・七振りを用意します」
「頼みます」
「それでは若林屋敷に入る方々は了源寺の茶店で待って居て下さい。既に、阿部川町の見張りなど手配りは出来ていますので、待つことなく屋敷に入れるようにします」
「お願いします。内藤さん、碁四郎さん、駒形と昇龍院から今日と明日、二人ずつ人が抜けますので宜しく頼みます」
男たちが持ち場に向かって道場を出て行った。

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Posted on 2018/10/17 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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10/17 20:33 | edit

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