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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その24)】 

 午後、兵庫は若林の屋敷に入り主の進之介が勤めから戻るのを待って居た。
茶を淹れて来た進之介の妻・栄が
「今日もお供をお願いして居ますが、戻るまで心配です」
「お気持ちは解りますがその心配はほとんど在りません。賊が狙っているのは平九郎殿です。その平九郎殿のことを賊が辻番に尋ねた時、辻番に化けていた養育所の者が、平九郎殿は散財したため部屋に閉じこもり謹慎していると嘘を教えています。賊は迷うことなく屋敷内に居る平九郎殿を襲うはずです。それと、賊にはもう一つ晦日の盗賊として働く狙いもあります。日中、人目のある中で進之介殿を襲うのは、敵討ちと盗人稼業の双方を困難にしかねません。ご主人は間もなく戻って来ますよ」
妻としての不安を語り、それを打ち消されることで不安を和らげてもらった栄は自室に戻っていった。

 仕事を終えた進之介が供の常吉と戻って来た。
実は、兵庫も進之介のことが心配だったのだ。その時、供として最も信頼できる者が常吉だったのだ。
 暫くして主が居なくなった隠居部屋に屋敷に居る全ての者が集まった。
集まったのは、進之介・栄夫妻、兵庫、新藤、金子、浜中、反町、常吉そして駒形の賄いの卯吉が来ていた。
「新之助殿、明日の予定はどう成って居ますか」
「今日と同じ出勤で、非番は二十六日になる三日勤めです」

 “三日勤め”とは三日の間に勤める日と、非番の日をご同役で割り振る勤務体制で、考えられるのは一日働いて二日休むか、二日働いて一日休むと云った、恵まれた?労働環境です。“六日勤め”という恵まれ過ぎた勤務体制もありましたが、いずれにしても下級武士の勤務体制であり、非番の日には内職をしなければならい者が多かった事情もあった様です。

 先ず、二十五日の夜の防御態勢は、ここに居る男の他に根津甚八郎、中川彦四郎が加わることが進之介に説明された。
そして、進之介の父・忠衛門と話し合った、押し入る賊たちを追い払う程度にし、事件とならないように治めることも告げ、進之介の同意を得た。
「先生、こちらの内外の支度ですが明かりはどうしましょうか」
「普段、明かりはどうされて居ますか」と兵庫が栄に尋ねた。
「無灯で御座います」
「それで動けますか」
「はい、長年その様に暮して居ますので、ただ種火の用意はしてあります」
兵庫は頷き、
「外は良くて星明りですが、中には明かりは無いのは賊も考えているでしょう。踏み込むために明かりは賊が用意するでしょう。こちらは火事を起こさせないように、要所に水桶を用意して下さい」
「役割は在りますか」
「当初の首尾は進之介殿付きに常吉さん、玄関に二人、廊下に二人、勝手口に二人、外に私ともう一人にします。賊が皆、庭内に入ったのを見計らって賊に襲い掛かりますので、外に打って出て戦って下さい」
「賊は待ち伏せされたと思うでしょうね」
「はい、待ち伏せされた種明かしは平九郎役を演じる甚八郎に語らせます。相手に落ち度が有るのです」
「それは聞くのが楽しみだ」
「未だ丸一日ありますので、事情が変わるかもしれませんので、私と常吉さんは今日はこの辺で失礼します。他の皆さんとも相談して明日参ります。」

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Posted on 2018/10/19 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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