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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その30)】 

 主・兵馬を出迎えた兵庫と志津は一旦隠居部屋に戻り、呼び出されるのを待った。
着替えを済ませた兵馬から声が掛かり志津と共に主の部屋に入った。
そこには巳之吉と幸太郎が堅苦しく座らされていたが、兵庫と志津が礼を尽くし主の前に座ると兵馬が、
「巳之吉、幸太郎は部屋に戻りなさい」
「はい、父上」と巳之吉は応え、幸太郎の手を引き部屋を出て行った。

 兵庫は幼い頃、ここで過ごしたことを思い出していた。
父の見送り、出迎えるなど一々させられ、誰が一番偉いかを知らされていくのだ。
その頃は兵庫が幸太郎の立場で、今の主・兵馬が巳之吉の役回りだった。
巳之吉は兄の役割を果たしていた。

「話は玉枝から聞いた。巳之吉は我が家の子として届けを出す。使いを寄越して貰いたい」
「その様にいたします」
「この話はこれまでとする。聞くところによれば霊岸島四日市町に在る闕所になった白子屋に入れ札したようだが、事件は知って居るな」
「はい、行きがかり上。しかし関与は一切していません」
「知って居てのことなら、とやかく言わぬが、何に使うのだ」
「この冬に成ってからだけでも、飢え、凍えていた子供たちを七十人以上収容して居ます。何に使うかは決めていませんが、家を建てるほどの財は在りませんので、もし安く手に入るものならと思ってのことです」寺の縁の下、農家の納屋に潜んで居た子供たちにとって怖いものは生きた人間です。
「落とせるか否かは時の運か・・」
「そうですが、町人と養育所とでは狙いが違いますので勝算はあります」
「違いがあるのは分かるが、どのように違うと思って居るのだ」
「町人は手に入れた物件から忌まわしき残存を消し去り、更に飾りたて客のごきげんを伺います。しかし、養育所は商いに使うにしても、柱の刀傷はそのままにし、奥山の化け物小屋でも見にくるような客を相手にします。要するに養育所は今の建物はそのまま使いますが、町人は建て直すことを前提に土地価格の入れ札をするでしょう。養育所の方が高い入れ札になりますので、勝ち目が在ります」

 兄から霊岸島の白子屋の話が出たが、兵庫からは昨日、晦日の三左衛門の残党が武家宅に押し入った話はせずに八丁堀を後にした。
帰り道、兵庫は船宿・浮橋に山中碁四郎を尋ねた。
出て来た碁四郎に、
「晦日の四郎さん、次の動きを始めましたか」
「いいえ、大した動きは在りません」
「事前に火盗改めに知らせるのは反対ですか」
「いや、ただ晦日の三左衛門の残党だと証明するためには、若林家に討ち入ったことを話さないと動いてくれるかどうか・・・」
「それでは全て久坂さんに話したうえで、久坂さんに任せるといのはどうですか」
「問題は、奉行所を動かしたにもかかわらず晦日に賊が動かない時の久坂さんの立場ですね。気の毒なことに成りかねませんからね」
「二人で悩んでも始まりませんね。明日、久坂さんを捉まえたら声を掛けますので駒形にお願いします。皆さんで話し合いましょう」
「分かりました」

 兵庫は帰り道、駒形の自身番に寄り岡っ引きの勇三に一朱を与え、久坂に駒形の養育所に来るように頼んだ。
そして駒形の養育所に寄り内藤虎之助に、巳之吉も鐘巻本家に入るので近々八丁堀に出向き取り決めを交わして貰う事を頼んだ。さらに明日、南町同心の久坂を招き晦日に予想される押し込みにについて話し合う事を告げ、神田庵に戻った。

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Posted on 2018/10/25 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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