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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第114話 正月(その4)】 

 押上の養育所は北十間川沿いの畑地に建てられた札差の寮を手に入れたもので、その後養育所として仕立て直したものである。
黒板塀だった表には十軒店(じゅっけんたな)と呼ばれる長屋に代わり、その十軒店の二か所が養育所への出入り口に成って居る。
ただ、正月二日の日、暖簾を出して居るのは茶店だけだった。
茶店だけが開かれていたのは、近くに江戸名所絵図にも載った柳島妙見堂や亀戸天満宮があり、茶店が潤う源に対するお礼の意味も有った。

 兵庫と志津の姿は養育所の前の通りに出て遊ぶ娘たちに依り認められて居て、表口に着く頃には留守居役根津甚八郎の妻・お琴の出迎えを受けた。
「お昼を頂きに参りました」と志津が挨拶した。
養育所に入ろうとする二人と慌てて茶店より出て来た常吉・お仙夫妻とで新年の挨拶が交わされた。

 昼までは少し間があり、兵庫と志津は子供たちにと広間に入った。
暫くすると、裏長屋に住む、中西家の者三人、近藤家八木家の者四人、山口家の者三人が少しの間を置いて挨拶に来た。
どの一家も、良い正月を迎えられたことに感謝していた。
そして、大工の彦次郎が部屋に入って来た。
「ひこじ~」と 声を上げ走り寄った子がいた。
源五郎と蟹の二人だった。
押上の養育所は神田庵と同じく、女の子が寄宿して居る。
その中に幼すぎる男の子も入れられていたが、男友達として彦次郎を選んだようだ。
そして、やって来た美しい母・志津と、たくましい父・兵庫の周りに集まり、ひと時を過ごした。

 昼食を子供たちと一緒に食べた兵庫と志津は押上を出て中之郷の養育所に入った。
ここでも大人たちと挨拶を交わした後、子供たちと触れ合うひと時を持った。
そして、帰りに永吉と富吉の二人を連れ出した。
二人は孤児ではなくそれぞれ母親がいた。
母親は養育所に収容された孤児たちが育っているのを見て、神田庵に雇われ暫くすると、我が子を養育所に預けることを望み同じ年頃の子供たちが居る中の郷の養育所に預けた。
ただ、心配な様子を見せるのを志津が感じ取っていた。
そのことを中之郷養育所の留守居・中川彦四郎に言い、二人の子が元気に過ごしていることを判らせるため一晩親元に泊めことにし、連れ出したのだ。
 子供を兵庫と志津の脇を歩かせ、神田庵に戻った。
急に戻ったこの声に心配して顔を見せた母親は、己の子の笑顔を見て安堵の様子に変わった。
「今晩一晩ですが甘えさせてください。明日、朝出かける時に連れて行きます」
「分かりました。有り難うございます」とおみよとおしゅんが頭を下げた。
こうして、それぞれの正月二日目が過ぎて行った。

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Posted on 2018/11/01 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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