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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第114話 正月(その10)】 

 奥から常吉を先頭に総三郎、浜吉、岩五郎の男四人が出て来た。
「旦那、こいつらは誰ですか」
「人の家に来て押入れを開けて金を探す男を“兄貴”と呼ぶ輩だよ」
「旦那、そういう輩を追い払うために雇ったんですよ」
「しかし、こんなに多くては素直に言っても帰ってはくれないと思い、お前たちが来るのを待って居たのだ」と云うと兵庫は男たちの中に殴り込んでいった。
同時に「伸してしまえ」と常吉が言い、薪ざっぽを持ち殴り込んでいった。
 多勢の油断と、密集していた悪党は。突然の攻撃を避けることも出来ずに一撃を受け、前列の五人が昏倒した。
「一人も逃すな。殴られたくなかったら地面に伏せろ」と兵庫が威嚇した。
後の出入り口近くにいた者の中には外へ飛び出し逃げようとした者も居たが追いつかれ、押されるとつんのめり転げ、逃げるのを諦めた。
 隠れていた彦次郎が荒縄を持って現れた。
「匕首を出して捨てなさい」
こうしてやって来た者が捕縛されていった。

 捕らえられたのは、兄貴と呼ばれた者を含め十三人だった。この騒ぎは周りの店も注目し遠巻きに成り行きを見ていた。
その者たちに、
「皆さん、私たちは本日来たばかりでここの事情に疎いです。この者たちは私たちが正式に奉行所より買ったこの家の財産を奪いに来た者たちです。申し訳ありませんが自身番が在れば引き渡したいので、係の方を呼んで頂けませんか」と兵庫が頼んだ。
 兵庫が頼む前から自身番に届ける者が居たのか、男が姿を見せた。
「お侍様、この辺りを見ています百吉と申します。この者たちは先日まで永代橋で悪さをしていた者たちです。すぐ奉行所の者を呼びますので、暫くそちら様で預かって頂けませんか」
「分かりました。百吉さん宜しく頼みます」
「恐れ入りますが、お名を聞かせて頂けませんか」
「私は養育所代表の鐘巻兵庫です。こちらはこの家の留守居をお願いする常吉です」
「養育所の方々でしたか。中川様から伺っております」

 十三人を土間に座らせた兵庫等は帳場に座り、話が始められた。
「先生、明日以降の不足品を仕入れに出かけます」と棒手振りの忠治が言った。
「ご苦労様でした。お願いします」
「台所ですが料理屋だけのこともあり、料理道具、什器の類、味噌、醤油、油などは間に合って居ました。今晩の食事は飯に、梅干し、新香は確保されて居ます。それと忠治さんが担いで来た青菜と干物が在りますので、明朝までは飢えずに済みます」と賄いの岩五郎が話した。
「それでは、晩飯の支度を頼みます」
「先生、直ぐに直さねばならないとことは在りませんが、人が暮らす場所にするためには物干しなどを裏に造らないと足らないでしょう」
「それお願いします」
「分かりました。本日はこれで引き揚げさせて貰います」と彦次郎ら大工衆は戻っていった。

 奉行所の者たちがやって来たのは半刻ほど経った頃で、帳場に夕膳を並べている時だった。
指揮を取って居たのは南町定廻り同心の平岡銀次郎だった。
「鐘巻さん。良い匂いだな」
「昼に来た時は腐った血の匂いで満ちていましたよ。香木を焚き、飯を炊き、干物を焼いたおかげです」
「今日はこちらに泊まりこみですか」
「はい、落札出来ましたこの家に盗人が入らぬように・・・」
「それにしても鐘巻さん、良く盗人を捕まえてくれました。助かります。こいつらはこっちの動きを見て、鬼の居ぬ間に動く悪知恵の働く者たちで、追剝もどきの悪事を働いて居た者たちです。まとめて捕らえて貰えたので、怖がらずに証人に成る者も居るでしょう」
「それは良かった。町の者たちも安心するでしょう」
「それでは、引き取らせて貰いますよ」
「平岡さん。そこに置いてある刃物も持って行って下さい」
「そんな物なくても、島送りぐらいには出来ます。売っ払って畳の張替えに使って下さい」
「それはどうも。頂戴いたします」
 十三人の悪党は引っ立てられていった。

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Posted on 2018/11/07 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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