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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第130話 ましら(その18)】 

 五つの鐘が鳴って暫くすると山崎が政五郎の大工道具を担いだ弥一を伴ないやって来た。
一階西の間に入り暫く話していると矢五郎と政吉がやって来た。
 それを出迎えた勘三郎が二人を部屋に案内した。
「少し話が有るのですが、後片付けの都合が在りますので先ず夕飯から始めます」
 その段取りが知らされていたのか、四人分の膳を女たちが運んで来て、出て行った。
「これが養育所の日々の食事で、ここで修行中の者たちが作った物です。ご馳走では在りませんが食べて下さい」
 そして食べ終わると先ほどとは違った女たちがやって来て膳を下げていった。
「如何でしたか。先日までは料理をしたことのない者たちにしては、なかなかのものでしょう」
「おいしく頂きました」
「それでは話をする前に政吉さんに私たちのことを話します。内容には腹立たしいことが入りますが、出来れば最後まで聞いて頂きたいと願っています。その上でさらにお願いをしたいと思っています」
「鐘巻様たちのことで私が腹立たしく思うようなことが在るとすれば、是非、聞きたいですね。良い薬に成りそうなので・・・」
「どうも、話し易くなりました。それでは私たちの身分から、私は奉行所与力の弟ですが、家を出て気ままな暮らしをしています。中川さんは奉行所同心の家でしたが、跡取りの彦四郎殿が職務で大怪我をして辞していますので浪人です。なお彦四郎殿は斬られの彦四郎として知られた方です。山崎さんは、今年の正月まで火盗改め方でしたが、今は浪人です。何か感じることがありますか」
「逃げ出したくなりますが、聞きたい話が聞けそうなので、お話しを続けて下さい」
「それでは、私たちが政吉さんのことをどの程度知って居るかをお話しいたします。私たちは先日まで、政吉さんのことをましらの平蔵と呼んでいました。山崎さん、似顔絵を出して見て貰って下さい」
 政吉は手渡された己の似顔絵を見て、
「良く描けていますね。着ている物からつい最近描かれた物ですね」
「それでは、似顔絵つながりでもう一つお見せします」
 兵庫は背後に置かれている物に被せてあった風呂敷を退けた。
「おお・・ここに在りましたか。謎が解けたのでほっとしています」
「ほっとした訳を聞きたいですね」
「銭箱の金銀が砂利に化けて居るのを見た時に生じた仲間への疑心暗鬼を押さえることができたことですよ」
「それでは良い話を聞かせましょう。先ず坊主二人の話ですが、寺に引き取られた後、奇跡的に息を吹き返したそうです。その後、行いを恥、毒を飲み亡くなったと寺社方の方から聞いて居ます。その上、盗まれた物も半分戻ったと寺社方に言い、小判を握らせ事件は無かったことにしたそうですから、政吉さん等を追う者は居ません」
「と云うことは、そこに鎮座しているお宝は誰のものに成りますか」
「引き取り手が居ないので私たちの物に成りました」
「私たちの中に、私も入りますか」
「使い道が、養育所の考え方と合致するものでしたら・・・」
「ちなみに養育所ではあの金をどのようにお使いになるおつもりですか」
「一つは中之郷に学校や町を建設するためにと考えて居ます」
「その学校には町の者たちも入れるのですか」
「それは望むことなのですが、町の者の多くは養育所を特殊な存在と見ていますので、交わるのを避けるのです。門戸は開けますが入って来るかは何とも言えません」
「いつの世の中にも、他人をさげすむことで己を上に置く吹聴が在りますが、これは盗人が無くならないのと同じですよ」
「随分と飛躍しますね」
「それは、わたしが盗人だと、あまりにも早く目に付けられたようですが、どうして判ったのか知りたくて、盗人話に戻したのです」
「それは気に成りますよね。話しますが、以後盗人は働かないと約束して頂けますか」
「年貢を取るのは盗人ではない。浄財と称し金を集めるのも盗人ではないですね」
「なるほど、政吉さんは年貢や浄財を集める大名や寺社は盗人の変わった姿だと考えて居るのですね」
「年貢や浄財がその目的のために使われていないなら、それは盗人と大差ないでしょう。ですから代わりに私たちが年貢や浄財に見合った使い方をするために拝借して居るのです」
「凄い論法ですが、感じる所は在りました。しかし捕らえられては、ねずみ小僧のように名を残すだけで終わってしまいます。そうなっては欲しく無いのです」
「ですから、どうして私が盗人だと目を付けたかを教えて下さい」

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Posted on 2019/12/07 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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