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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第六話 折れた虎徹(その24)】 

二人の話を聞いていた倉之助が
「大和屋、もし良ければ、この刀を買った者と話をつけ、双方に遺恨が残らぬように致すがどうじゃ」
己が売った刀が、目の前に折れた血刀となって居るのを見て、大和屋には商売より、恐怖の思いが湧き上がったのか、口をつぐんでしまった。
それを見た惣衛門が
「大和屋さん、こちらの相川様は板橋宿では加賀藩の御留守居役とも話をまとめられた御方です。力になって頂いたらいかがですか。お相手はどなたなのですか」
武州屋の促しに暫らく考えていた大和屋だったが、重い口を開き
「刀を買っていただいたのは、刀道楽で有名な御旗本の畑中庄太夫様でございます」
「その畑中とかいう旗本は何石取りかね」
「はい、確か千石と伺っております」
「千石取りか。四公六民として四百石、他に見入りも無かろうから道楽していては日々の暮らしも楽とは言えぬかもしれぬな」
「はい、今は未だ良いのですが、夏ともなれば庭の手入れも行き届いてはいませんでしたね」
「左様か、それでは落としどころだが、大和屋はあと二十両でよいか」
「はい取れないよりは二十両でも頂ければ文句は言いません」
「そうか、それでは早速だが、畑中殿に使いに行っては貰えぬか」
「使いと申されますと」
「板橋宿の武家、相川と言うものが、珍しい刀を持ってきて、買い手を捜している。何はともあれ最初にお声をかけねばならぬと思い参りましたとでも言いなさい」
「確かに珍品ですがそれで来られますかね」
「もし来るのを渋ったら、試し切りの証し付きと申したとでも付け加えろ」
「はい、分かりました。 それでは・・」
「まだだ、来るときには即金で二十両、他に五十両か大和屋から買い求めた五十両分の刀を持参願いたいとな。それと、買うか否かは見てから決めてもらってよいとも言ってくれ」
「何ですか、他の五十両とは」
「それはだな、この虎徹を折るほどに打ち込めば、いかなる名刀といえどもかなりの傷を受けるのじゃよ。だが、このことは言わんでくれ」
「分かりました。行って参りますが、早ければ四半刻ほどで戻りますので、表の方で刀など見ながらお待ち下さい」
 大和屋が店を出て行くと倉之助等は言われたように、店の表座敷に移り番頭が持ってくる刀の目利きを三人でしながら時の経つのを忘れ、興じていた。
「そろそろ七つ半、戻る頃だな。ところで惣衛門・兵庫、旗本との話はわし一人でする。血刀を売るには余計な気を使わせてはうまくはいかぬからな」
「分かっております。千石取りの旗本が出向いてくるだけでも体面を失いかねない話です。お話は、帰りの道でお聞かせ下さい」
やや不満気味であった惣衛門も兵庫の言葉を聞き納得したようであった。
そうこうしていると、大和屋の供をした手代が戻ってきて番頭に
「旦那さまと御旗本の畑中様が間も無く参られます」
それを聞いた倉之助は、立ち上がると奥へと消えていった。
暫らくして、惣衛門と旗本畑中庄太夫が小者を伴い店に入ってきた。
庄太夫は小者に待つように言うと、大和屋の案内で奥へと消えていった。

Posted on 2011/07/24 Sun. 05:03 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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