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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第六話 折れた虎徹(その26)】 

刀箱を抱えた庄太夫が座敷を出て行くのに倉之助は従った。
庄太夫は店の表座敷に控えていた小者に鋏箱の中から錦の袋に納められた刀を取り出させ、それを倉之助に渡すと、抱えていた刀箱を鋏箱に納めさせた。
土間に降り草履を並べる大和屋に
「世話になった」
大和屋は深々と頭を下げた。
店の者は皆外に並び店を出て行く旗本畑中庄太夫を姿が見えなくなるまで見送った。

 店の奥座敷に倉之助以下四人が戻った。
倉之助の前には、二十両と錦の袋に納められた刀、一振りが置かれている。
それを見て大和屋喜平は満面の笑みを浮かべ倉之助を見ていた。
「それでは」
倉之助は二十両の小判を掴むと、己の懐に入れた。
「あっ、それは手前どものでは」
「大和屋、お主が欲しいのは未払いの五十両であろう。この一振りでその五十両に引き当てろ」
怪訝な顔の大和屋に
「わしの懐の二十両の方が、お主が五十両で売ったこの刀より良いと申すのか。大和屋それほど利を貪っておるのか」
大和屋は笑いながら
「相川様、私の負でございます」
「しかし大事な客を一人無くさせてしまった気がするが、許してくれ」
「いえいえ、これまでに十分儲けさせていただきました。これも潮時というものでございましょう」
「潮時か。それではわし等も板橋へ漕ぎ出だすことにいたすか」

 まんまと二十両をせしめた倉之助は、その日道場に戻ると三人を呼び出した。
「さて、この二十両の配分だが、兵庫が刀を折らねばこの金は手に入らなかった。その働きは半分の十両と言いたいが、ここは八両で我慢してくれ。二十両せしめたわしが五両。佐々木と岡部が三両ずつ、残った一両は斬った犯人を仲間の一人と言い当てた役人の糟谷に渡すことに致す。依存はあるか」
 ほとんど濡れ手に粟で手に入った新年のお年玉、誰も不満の在ろう筈も無く、目の前に置かれた小判を懐に収めた。

Posted on 2011/07/26 Tue. 04:37 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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