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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第十話 貧乏侍(その17)】 

 それを見た五平の様子が尋常ではなくなってきた。
「思い出した。むかし隠した所があった」
五平が叫んだ。
虎之助はその言葉を意に介せず床板を剥がし、
「掘った跡があるのはこの辺だな」
「十両、いや二十両渡す」
五平の声がむなしく虎之助の耳を通り抜けた。
 虎之助が床下に降り、手で土を退けると壷の蓋が現われた。
「見つけたぞ」
虎之助は蓋を開け中身を取り出し、懐の中へ入れた。
「切餅(25両)が六つも有ったぞ。他にもあるかも知れぬが、拙者は欲深くないゆえこの辺で引き上げる」
虎之助は空になった壷に蓋をし、はがした床板を元に戻すと
「立つ鳥跡を濁さず」
と言いながら出て、五平が開けた茶店を閉めた。

 そして、茶店の裏に行き、風呂敷を解き、石を捨てると、置いてあった弁当行李を取り、その中に懐の切餅を並べ、蓋をした。
風呂敷に小判の詰まった弁当行李ともう一つ空の弁当行李を入れ、包むと、裏参道を中仙道に向かって歩き始めた。
 途中の浦和宿近くで、虎之助は朝一番の渡しでやって来た兵庫や役人の糟谷とすれ違った。
「虎之助さん、もう高崎まで行き戻られたのですか」
「はい、井筒屋の留吉さんから未だ使いの半金を頂いておりませんので・・」
「そうですか。井筒屋さんは喜んでいましたよ」
「どうやら、皆捕まえたようですね」
「いえ、賊の中に茶店の五平が居なかったので、これから捕まえに行く所です」
「ほ~、そうでしたか。早く行って捕まえて下さい」
兵庫らは大宮へ、虎之助は板橋へと別れていった。

 虎之助は途中、蕨宿で兵庫の思い人、幸が営む小料理屋‘はつね’により、一番安い掛け蕎麦を食った。
勘定を払う時
「幸さんは居られますか」
「女将さんなら中に居ますよ。呼びますか」
「お願いします」
出てきた幸が
「私が幸ですが、何か御用でしょうか」
「これは大宮の五平さんから預かったものです。鐘巻様に、お役立て下さいとのことでした」
「貴方様のお名前は」
「虎と言えば分かります」
そう言い残すと虎之助は店を出て行った。

 丁度その頃、大宮宿氷川参道沿いの茶店‘みたらし’の前に、役人の糟谷、岡っ引きの佐平、他に浦和代官所役人の小沢睦五郎とその岡っ引き、そして兵庫がやってきていた。
「店が開いておらぬ。逃げたか」糟谷が呟いた。
「私が確かめに入りますので、戸を開けて下さい」
岡っ引きの佐平ともう一人が、無理やり戸を外すと兵庫が飛び込み、糟谷、小沢、岡っ引きが続いて入っていった。
 そして見たものは、奥の柱に縛り付けられていた男の姿だった
「五平に間違いありません」
兵庫が糟谷に告げた。
「誰が・・・」
「先程すれ違った内藤さんでしょう」

Posted on 2011/10/09 Sun. 05:32 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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