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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第十話 貧乏侍(その19)】 

 そこに五平を捕らえ、ひと調べを終えた宿場役人糟谷隆三郎と佐平がやってきた。
「なんですか。鐘巻の旦那、もう戻ってきたんですかい」
「まだ、用が済んでいませんでしたので」
「良い話だ。井筒屋が十両よこしたぞ」
倉之助は井筒屋利兵衛から貰った十両を分けたことを言い、二人にも一両ずつ手渡した。
「こっちにも良い話が在る。留吉が自身番にやってきて娘は質に取られて居らず、高崎の預け先に居るという返事を例の虎之助さんが持ち帰ったそうだ」
「それは良かったですね。五平が申したとおりでしたか。心配していたのです」
「どうして留吉は五平に弱みを握られたのだ」
倉之助が合点がいかぬ様子で尋ねた。
「そのことは、話せば長いのだが・・・」と宿場役人の糟谷が語り始めた
「留吉は今の手代になる前は外働きで中仙道をよく往復していた。その仕事の行き来の中で、五平の茶屋にも何度か立ち寄り、顔馴染となり身の上話もしたのだ。それが今年の春に手代に引き上げられることになった。留吉は最後の外回りの時、高崎の奉公先に居る娘への土産に櫛を買い出かけた。その途中、長年茶を飲んだ五平の茶店にも寄り、もう来られないと挨拶をするなかで櫛も見せたのだ。娘から届いた返事でも割符に使った櫛は無理やり奪われたものだそうだ。捕まえたやくざ者の一人がやったんだろうよ。これが留吉から聞かされた話だが、押し込みまで企てた経緯(いきさつ)については、これから五平に聞くのだ。勝手に想像してくれ」
「そうか、五平は兎も角、留吉は賊が入る前に主人に詫びたそうだ。利兵衛も赦すつもりなので、穏便に治めて貰いたい」
「それは分かっている。だが預かって貰っている四人は駄目だ」
「千両もの大金を奪った後、五平の待つ茶屋まで素直に戻るとなると昨日今日の付き合いではなさそうだな」
「そういうことになるな」
「兵庫、四人を連れて来させろ」

 暫らくして、袋叩きにされた四人の賊が喜助によって引き出されてきた。
いたる所が腫れ上がった四人を見ていた糟谷と佐平、
「お尋ね者ではないようだが、押し込みの罪は重いぞ」
四人は、ふてくれた様子や後悔の表情を見せた。
兵庫、自身番まで手をかしてやれ。

 兵庫が賊の四人を自身番まで送った帰り道、宿場の道を歩いていると、虎之助が一軒一軒に立ち寄りながら
「何か御用は御座いませんか」
と声をかけ街道を歩いて来た。
「内藤さん」
兵庫の声に振り向いた虎之助に
「あのお預かり致しました金は宿場の役に立てることになりました。ところで何故、あの大金を持って逃げなかったのですか」
「それは、以前あなたに教えたはずですよ」

Posted on 2011/10/11 Tue. 05:16 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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