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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その2)】 

 一方、十兵衛の後を追った弥一は、吾妻橋の中ほどでそれらしき姿を見た。既に陽は落ち暗いので確かめるには近づかねばならないが、弥一は十兵衛を捕らえる時に顔を見られて居るため、安易に近づいて気が付かれては役目が果たせなくなる。
しかし、近づくことも無く前を行く男が十兵衛であると確信が持てた。
なんと中之郷の屋敷を先に出た浪人五人が橋の西詰で待って居たのだ。
男は浪人の姿を見て、小走りに近づいて行き浪人と二言三言話すと、浪人たちの前を歩き、日光街道を北へと曲がり姿を消したからだった。
「まちげぇねぇ。奴は十兵衛だ」

 十兵衛を追った弥一だが、十兵衛がその日遅く草加宿の店に浪人五人と入るまで何事も無かったことを見届けた。ただ、その間に何度か話し合う様子が見られたが何を話していたのかは分かって居ない。

 夜分、十兵衛に戸が叩かれた家には女が居た。女が耳を澄ますと
「お麦、俺だ」
聞きなれた声に女が灯りを持って戸口に行き、
「あんたかい」
「他に誰が居るんだ」
おんなが恐る恐る閂を抜き明けると、十兵衛が立って居た。
「あんた大丈夫かい。使いの知らせでは捕らえられたと聞き、その事を兄さんにも知らせに行って貰っているところです」
「お麦、捕らえられたことは間違いねえが、先生方もわしも、この通り解放されたよ」
「命を狙った者たちを、その日の内に無事に帰すなんて考えられないよ」
「そうだよな、わしもそう思うよ。一時は斬杆状を付けて首をこの宿場に晒す話も出たが、問われるままに正直に返事をしていたら、赦されたのだ。先生方に聞いてみろ」
お麦が浪人たちを見た。
「言っていることに間違いはない。わしなどはこの様に傷の手当までしてくれたよ」
「それにしても、あそこの夕飯は旨かったな」と別の浪人が言った。
「何、暢気なことを話しているのよ。明日、兄さんが来るから分かるように話して下さいね」

 一夜明けて嘉永六年九月二十八日(1853-10-30)の押上の養育所は男の子たちが向島に移ったため暫く静かだった。
その静けさ故に、遠くから駆け寄って来る気配が届いて来た。
やって来たのは、坂崎新之丞を先頭に中之郷養育所内に住む男たちだった。男たちは押上に置いてある稽古道具を身に付けると、道場には入らず整列した。
これまでにない動きに、兵庫がやって来ると、坂崎が
「先ず、中川矢五郎殿から特に動きは無いとのことです」
「分かりました。他には・・」
「鐘巻さん。中之郷元町の養育所に道場が出来ました。しかし養育所とは名ばかりで子供が居ません。子供たちの声が道場に鳴り響く日が来るまで、我らの稽古に使わせて下さい」
「結構ですよ。中之郷の道場は坂崎さんにお願いするつもりでしたから。今より戻って頂き、稽古を始めて下さい」
「お言葉に、甘えさせていただきます」
坂崎はやって来た者たちと中之郷に戻っていった。
兵庫は坂崎の後ろ姿に、坂崎が望んでいた江戸で道場を開くことが形はだいぶ違うが、曲がりなりにも叶ったことを喜んでいるのを見た。

 そして向島に移った子供たちの声が近づいてきた。これには子供たちと一緒に向島に移った大人五人も護衛を兼ねやって来た。それらは保安方見習いの山口藤十郎、十軒店で雑貨屋修行を始めた元繁蔵一家の空太と元久蔵一家の金吉、他に棒手振り修行を始めた元東都組の伊佐次と忠治だった。
 こうして子供たちを主体とした朝稽古が始まった。
その後、山中碁四郎、駒形住まいの元東都組の七人が加わり、稽古に熱が加わっていった
これがこれから暫く押上で行われる朝稽古の姿に成ることになった。
そして、朝稽古が終わると外から来た者は一旦朝飯を食べに戻っていった。
男の子たちは朝稽古と午前の勉学のために駒形に来るが、自由時間は向島の家を冬温かく過ごす、山内田鶴に教えられた改築を元宮大工の彦次郎とすることに成って居た。
男の子たちの過ごす時間の多くが向島に移ったことで、兵庫は暇になった。昨日までなら外出するのだが、十兵衛を追った弥一がいつ戻って来るか分からないので気ままな外出は控え雑用で時を過ごすことに成った。

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Posted on 2017/08/15 Tue. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その1)】 

 嘉永六年九月二十七日(1853-10-29)の夕刻、浅草を巡って来た鐘巻兵庫が中之郷元町の養育所に立ち寄った。
そこでは駒形から運んだ道場の移築・再建を済ませた男たちの内祝いが行われていた。これに付き合い、押上に戻ろうと、いつもより遅れて養育所を出ると門前で履物屋を営む玉三郎から、狙われていることを知らされた。
手を打った兵庫は、襲ってきた浪人五人と襲わせたやくざ者一人を捕らえ、再び中之郷の道場に戻った。
浪人は見知らぬ者たちだったが、やくざ者は道場の柱を寄進した者の一人、草加宿の千疋(せんびき)屋十兵衛だった。
十兵衛に対し、兵庫を襲った訳を問いただした。これに対し十兵衛は素直に応えた。
兵庫は浪人五人には何らの制裁も加えずに解放した。
十兵衛には百両の借用書を書かせ、これも解放した。

 草加宿のやくざの頭、千疋屋十兵衛を見送った兵庫等は道場に戻って居た。
「此度のことは仙吉さんには内緒にして下さい」
仙吉は兵庫の所にくる以前は十兵衛を親分として仕えていた。その十兵衛が兵庫の命を狙ったとは教えられなかったのだ。
「分かっております」と常吉と乙次郎が応えた。
「それでは甚八郎、小六さん、常吉さん、乙次郎さん、押上が手薄になって居ますので戻って下さい。私も此度の反省をしたら戻ります」

 道場から四人が姿を消すと、万屋(よろずや)弥一が呼ばれた。
「弥一、先程ここを出て行った、草加の十兵衛を追い、二・三日様子を見て戻って来てくれ。何が起きようと手を出すな」と矢五郎が言い、路銀を与えた。

 弥一が道場から出て行くと、碁四郎が
「兵さんが仙吉さんの元親分・十兵衛に引導を渡すことなく成り行きに任せたのは分かりますが、矢五郎さん、どうなると思いますか」
「わしの今の見立てでは、早ければ今夜、遅くても二・三日の内に、あの五人の浪人に殺される気がしている。余計なことを言ったからな」
 余計なこととは、十兵衛の不慮の死でその財産全てを勝五郎が得るという、とんでもない念書を交わしていることを不用意にも殺人を金で請け負った浪人たちが居る場で話してしまったことだった。
「私もそんな気がします」と碁四郎が矢五郎の返事に同意を示した。
「私も同じですが、十兵衛は嵌められて、私を狙ったような気がしてならないのです」
と兵庫が呟いた。
「嵌められた?」と皆の視線が兵庫の次の言葉を待った。
「私が支配する人・物・金について誰かが聞いたという話が有りましたね。応えたのは新門しか考えられません。もし、尋ねたのが念書を取り交わした勝五郎だとしたら、それとなくそそのかしたような気がするのです」
「そう言えば、何千両あるかもわからない養育所の隠し金を奪えればなどと言って居ましたね。草加で埋もれるのが嫌だった者にとっては、手を出さずに済まされなかったのでしょうね」と内藤が言った。
「断定は出来ませんが、旨い話を聞かされ兵さんを襲った訳ですから、嵌められた可能性は高いですね」と碁四郎がいった。
「数日の内に、十兵衛が浪人たちに殺されたとして、草加の縄張りや家などの財産は勝五郎のものに成ってしまいます。死人に口なし、勝五郎を咎めることは出来ませんね」
と兵庫がぼやいた。
「今のところ嵌めたという証拠は有りませんので咎めることは出来ませんが、十兵衛に書いて貰った百両の借用書を持って、全財産を引き継いだ勝五郎に会いに行ったら、何かぼろを出すかもしれませんよ」
と内藤がかすかに残って居る望みを披露した。
「百両の借用書は十兵衛さんが死んでも生き続けるのでしたか」
「素直に払われてしまうと、攻め所が無くなりますね」
「百両を即金で払えるほどの余裕はないでしょうから、利息の話できっともめますよ」
話しが細かく成ったところで。
「今日はこの辺で・・弥一が戻ったら知らせます」と矢五郎が締めた。

 兵庫が中之郷の屋敷を出て、押上に戻る途中も、気を抜くことは出来なかった。
兵庫を襲う者は十兵衛に限ったことではなかったからだ。
また兵庫が敢えて狙われる立場に身を置いていることを押上の養育所の男たちは知って居て、十軒店の外に出て戻って来る兵庫の姿を見て顔を見合わせ、ほころばせた。

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Posted on 2017/08/14 Mon. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

幕間つなぎ(99話~100話) 

99話「標的」を(その45)で無理矢理終わらせましたが、実は終わってはいないのです。ただタイトルを「標的」としたため、話を続けてもそのタイトルが益々寝ぼけたものに成る気がしたためひとまず終わらせ次話「共喰い」で「標的」その後の話を書くことにしました。いつもの事ですが話の流れはその日の思い付きに因る所が多く、タイトルとは縁の無い支流に入り込み、前途を見失うアドベンチャーで自己満足するのです。前編が「標的」後編が「共喰い」ですが、通したタイトルは「?」。
今日一日、鐘巻兵庫の話はお盆休みを頂き、後編の流れを考えさせて頂きます。

Posted on 2017/08/13 Sun. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第99話 標的(その45)】 

 十兵衛は思った以上に素直だった。
「先ほど類が及んでは申し訳ないので、その名は言えないとのことですが、聞くまでも無くこの道場の四本柱に名を連ねた方々ではないかと察しがつきます。察しがついてもその方々に今回の一件でこちらから会う事は致しません。それは信じて下さい」
「信じましょう」
「ただ心配事が在るのです」
「どのような?」
「失礼ながら、十兵衛殿が思いついたことを、他の三人の誰かが思いつくのではないかと云う事です。このこと考えられますか」
「わしが思いついたのだからな・・・」
「私としては何度も狙われるのは嬉しくは有りませんので、狙われないようにしなければなりません。お判りいただけますか」
「それは分かりますが・・・」
「そのためには、十兵衛殿の咎を明らかにして、考えられる最もきつい仕置きをして見せ、真似をすることを思い留めさせなければならないでしょう。しかし、私は先ほど五人の方々は放免すると云ったので、今日のことは事件にはいたしません。公に仕置が出来ないとなると十兵衛殿を闇奉行が仕置きすることになります。例えばあなたの首に斬奸状を付けて草加宿に晒すとかですが。やりたくはないのです」
「私も出来れば、遠慮したいですね」
「それでは、どのような話から此度の知恵を借りたのか名前は仮の名にして話して頂けませんか」
「四人の内の一人が鐘巻様の支配する人・物・金について尋ねたことが発端でした。話が
どう進展したのかは思い出せませんが、鐘巻様を恐れなければならないのは悪党だということになり、そうしたら“善人ではない”と言う者が居て、その言葉をどう理解したらよいのかと考えて居たら、別の者が“馬鹿なことは考えない方がいい”とその時の私には分からぬことを云ったのです。これが全てなのです」
「それではその後、例えば草加に戻ってから、草加宿で埋もれたくはない。そして東都組のように浅草に一家を開きたいと思ったとします。しかし、私に斬られて死んだ、東都組の頭・半蔵と同じ轍は踏みたくはない。そこで四人で話したことを思い出し、悪党にとって怖い私を除こうと云う馬鹿なことを思い付き行動を起こしたのですね」
「そう云うことに成ります」
「碁四郎さん、聞いて居て納得出来ましたか」
「やったことの良し悪しは別として、噓は云って居ない様に思えます。斬杆状付き晒首の代わりに、いつもの様に話を付けたら如何ですか」
「それでは、十兵衛殿の欲から出た悪事に対しての仕置は十兵衛殿に損をして頂くことにします。それで宜しいですね」
「それが鐘巻様のやり方だと伺っていますので構いません」
「これまでの事例で久蔵一家や繁蔵一家からは家屋敷を頂きましたが、草加の家屋を頂くことに成りますが宜しいですね」
「それが家屋は私の持ち物ですから良さそうなものなのですが、ご存知だと思うのですが草加の縄張りを取り戻す折には越谷の勝五郎さんのお世話になって居ます」
「そのようなことが在りましたね。それで何か差支えが在る訳ですか」
「はい、越谷宿と草加宿の縄張りを別々に仕切って居ては又、成りあがり者が出て来て追い出される恐れが在る。今は助け合えるから良いが、平穏が続けば乗っ取られた過去を忘れるだろう。そうならない様に勝手な行動はしないこと、もし勝手なことをして死ぬとか、縄張りを維持できなくなった時は互いに縄張り、全財産を引き継ぐ念書を交わしたのです。ですから、こうなった以上草加の財産、縄張りは私のものだと、勝五郎さんは云うでしょうね」
「と云う事は無一文ですか」
「はい、そうなります」
これを聞いて、兵庫、碁四郎、虎之助が顔を見合わせ、矢五郎と彦四郎も十兵衛と勝五郎の関係に驚きを隠さなかった。
「参りました」と兵庫は十兵衛に頭を下げた。
「上手の手から水が漏れましたな」と虎之助が言った。
「どう云う事でしょうか」と十兵衛が怪訝な顔をした。
「実は、私を標的として狙う者が居るだろうと罠を張って居たのです。そしてまんまと罠に掛かったのが知り合いだとは夢にも思って居ませんでした。それも無一文では、掛かった罠代の元が取れないからです」
「それは申し訳ありません。私も無一文に成るとは思っても居なかったのです」
「十兵衛さん、私はあなたを許しますので無一文には成りませんよ。その代わり百両の借用書を書いてください。何年かかっても良いので返して下さい」
「有り難うございます。必ずお返しいたします」
「それでは五人の方々はお引き取り下さい。刀は門を出る時受け取って下さい。お見送りをして下さい」

 暫くして十兵衛も百両の借用書を書き終わると帰っていった。
見送る兵庫からは、
「もう私を標的にするのは止めて下さいね」と別れの言葉が送られていた。

第九十九話 標的 完

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Posted on 2017/08/12 Sat. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第99話 標的(その44)】 

 兵庫の声を聞きつけた常吉が茶店から出てみると、駆けて来る兵庫の後ろに白刃をきらめかせ追って来る侍たちを見て、女房のお仙に「根津様を」と告げ己は木刀を持って乙次郎と十軒店から飛び出して来た。
「先生!」と逃げて来る兵庫に声を掛けた。
「川向こうの男を捕らえに行って下さ」と言いつつ、追って来た先頭の男に懐からとりだした石を投げつけた。この石は玉三郎から“狙われている”と教えられた時、酔った振りをしてわざと転び拾ったものだった。小さな石だったが頬を掠ったため侍は勢いを減じてとまった。その間に兵庫は抜刀し、更に斬りつけた。
男の額から血が流れ出た。
そして、一番後ろの男が悲鳴を上げた。
坂崎に後頭部を棟打ちされ、振り返った所を今度は額を斬りつけられ血を流したのだ。
「手加減したのはお判りでしょう。このまま続ければ大事な筋を斬られ不自由な体に成ってしまいますよ」
そこに足を引きずりやって来たのが中川彦四郎と矢五郎で、兵庫の後ろには押っ取り刀で出て来た根津甚八郎と近藤小六が立った。
「もうこれ以上争うのは止めましょう」と云い、兵庫は刀を手拭いで拭い鞘に納めた。坂崎もこれに倣った。
これで浪人たちも刀を納めた。
「傷の手当てを致しますので茶店に入って下さい」
二人の傷は兵庫と坂崎により縫い合わされ、薬を塗られ、包帯をされ終わった。
その手際の良さが、二人の厳しい戦歴でもあった。
そして常吉と乙次郎そして弥一が追っていた男が連れて来られた。
その男は草加宿の千疋屋十兵衛だった。
「五人のお方は、こちらのお方に私を襲った訳を聞いたうえで解き放ちます。それまで両刀を預からせて頂きます。尚調べは移築が終わった中之郷元町の道場で行いますので、そこで待って居て下さい。私は遅れて居る夕ご飯を食べてから出向きます。皆さん方も食事が未だでしたら、飯屋で食べてから行って下さい。私のおごりです」

 広間では、女の子たちが待って居た。男の子たちはこの日の夕食から向島で食べることに成り、その姿は無かった。女の子の数も千夏とかえでが賄いで向島に移ったため少なく成って居た。
「待たせてすみませんでした。道場の移築が終わったので見て来て遅れました。それでは頂きます」

 食事を済ませ、部屋に戻った兵庫の顔は優れなかった。
「表で何か在ったようですが・・・」
「五人の浪人に私が襲われました。頼んだのは草加宿の千疋屋十兵衛さんのようです」
「分かりませんね。何の得が有るのでしょうか」
「私も、興味が在りますので、これから中之郷まで行って来ます」

 中之郷の屋敷内に移築された道場には明かりが灯され、その灯りは周囲の障子を照らし、北側に南向きに座らされた六人の影を薄くしていた。
その道場東側と西側には中川矢五郎、坂崎新之丞、根津甚八郎、近藤小六、常吉、乙次郎が分かれて座って居た。
そこに兵庫、急遽呼ばれた山中碁四郎、内藤虎之助、そして中川彦四郎が入って来て空いて居る南側に座った。
「草加宿の千疋屋十兵衛殿とお見受けいたしますが、ご本人に相違ございませんか」
「間違い御座いません」
「それではこれから色々とお尋ねしますが、隠さずにお話しいただきたい。黙秘は出来ません。脅すわけではありませんがここには元奉行所勤めの者が居ると云う事を忘れずに正直に話して頂きたい」
「分かりました」
「それでは、人を頼み私を襲わせた、その狙いは何でしょうか」
「草加宿で埋もれたくはなく、浅草に一家を開こうと思ったためです。他に何千両あるかもわからない養育所の隠し金を奪えれば、そのためには邪魔なのが鐘巻様だからです」
「どうしてそのようなことを思いついたのですか。誰かの知恵ですか」
「知恵を借りたと言えば借りましたが、その者たちとは一切の相談をしていません。類が及んでは申し訳ないのでその者の名は申し上げられません」
「分かりました。無理には伺いませんが此度のことを子分衆は知って居ますか」
「鐘巻様の名は出してはいませんが、人を殺めるための人集めをさせましたので、物騒なことをすることは知って居ます」

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Posted on 2017/08/11 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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